Vintage 55
~ Vol.2 : HINTING Jacket / M-65 ~
&Bの山下です。秋冬アウターのライナップを紹介するシリーズが前回から始まりましたが、今回も前回に引き続き
Vintage55の冬のアウター、M-65TypeのHinting Jacketになります。まずはVintage55のブランド紹介からさせて頂きます。
【 Brand Info " Vintage 55 " 】
アメリカの産業が急速に発展していく1955年までに誕生した
Work / Military / Sport / Collegeといったスタイルは、機械化されていく以前の贅沢な手仕事が反映された永遠のアメリカン・スタイル。この1955年をブランド名に冠した”Vintage 55”は2000年イタリア、ミラノにて誕生。古き良き時代のアメリカンスピリットと現代におけるイタリアの縫製技術を融合したブランドです。
【 HINTING Jacket 】
Price : ¥76,650(税込)
Size : S / M / L
Fabric :
≪表地≫
(表) コットン57% / ポリエステル43%
(中綿) ポリエステル 100%
(裏) ナイロン 100%
≪ライナーベスト≫
(表) ナイロン 100%
(中) ポリエステル 100%
(裏) ナイロン100%
※上記アイテムは、 R&BLUES銀座店、 &B azabu tailor GINZA6店にて取扱いしております。
ライナー付きのこちらのブルゾン、春秋にはライナーを取り外し1枚で着用、寒くなった真冬にはライナーをつけてその保温力を高める(ベストとしてライナー着用可)、この気候(季節)に柔軟に対応するモノとしての機能性が◎ですね。
(L)ライナーを取った状態...
(R)M-65 Field Jacket仕様に乗っ取って、ドローコードも標準装備。胴周りのもたつきはこのドローコードを少し締めておきフロントを留めるだけで随分と変わってきます。
(L)肘部分には共地エルボーパッチ
(R)開閉しやすい袖口釦止め仕様
いかがでしょうか。製品としての風合い、機能性どちらを取ってもハイクオリティーなアイテムとして仕上がっています。シルエットもアームと身幅を絞ったモダンなシルエット、またオイルドコットン風の味わい深い生地感も良く、長年着込んだようなヴィンテージ感がにじみ出ています。ミリタリーをカジュアルに着回すのがここ最近の"流れ"の1つ。スーツの上から羽織っても難無く使える、完成度の高いジャケットである事に間違いはないですね。気になられた方は是非一度ご覧にいらして下さい。
【 M-65 Field Jacket とは... 】
ちょっとここから、上記のVintage55のアウターにも採用された定番デザインM-65型に関して、本来"M-65 (Field Jacket)"とは一体どんなものなのか...私が知っている限りでササっと書いてみたいと思います。
M-65 Field Jacket ... まず初めに1965年に正式採用されたので
"M-65 Field Jacket"と呼ばれています。第二次世界大戦(1939~1945)から朝鮮戦争(1950~53)において着用されてきたM-41やM-43、M-50、M-51フィールドジャケットの後継として誕生したのが、今ではカジュアルアウター定番型とまでなった
M-65です。アメリカ軍の装備品では"Jacket"ではなく防寒用"Coat"という位置づけで、裾の長さも各々のサイズ毎にX-Short、Short、Regular、Longの4種類がありました(※L,XLサイズにはX-Shortの設定は無し)。約40年以上にわたりアメリカ軍の現用モデルであり続け1990年頃、軍納入完了されました。
M-43の洗練されたジャケットスタイルとM-51の画期的なライナー統合システム、これら2つのアウターの長所から生まれた名品と言っても過言ではないM-65、もちろん両者と似ている点が多いのですが大きく変わった部分もあります。それは何と言ってもまずはやはりその"素材"の変化にあったと思います。M-51が綿100%という素材に対して、M-65では
「ナイロン」という当時では新素材のものを混紡した「綿×ナイロン(コットン・ナイロン)」構成を取っていました。ナイロンの特徴である
速乾性と
耐久性、 綿の特徴である
保温性と
吸湿性。こういった機能性が、ベトナム戦争中(1959~75)に米軍等が悩まされた東南アジアならではの天候「スコール」...特に南ベトナム高地で降ったスコール後の寒さから兵士の身を守っていたと言われています。
(ここから少々マニアックです...)その他の仕様にまつわる話としては、前身頃に付く両胸両腰4つのポケットのスナップ釦がすべて生地の裏地に縫い込まれていること。これにより金属部が本体の表面に露出しないので、金属部が装備品に触れ音を立てたり、傷が付かないようになっています。またその他にも、フロント部分はファスナーとスナップボタンのダブルクローズ。1971年頃までのM-65初期納入分には、ファスナーにアルミが用いられていたんですが、柔らかい金属であるアルミは耐久性の面や酸化すると開閉しづらくなるという問題が浮上し、中期以降はほとんどのモデルで真鍮製のものが採用されました。真鍮とは黄銅の事でして、銅(Cu) と亜鉛(Zn) の合金で、亜鉛が20%以上のものを黄銅(真鍮)と言います。ただ、真鍮も酸化に強いとは言え海軍や海兵隊など塩害を受けやすい環境での作業により腐食は避けられず(鈴を添加した耐海水性ネーバル黄銅=
海軍黄銅の開発)、加えて更なる軽量化を計るため1985年頃からのモデルにはプラスティック製のものが採用されることが多くなりました。ちなみに黄銅(真鍮)は日本で仏具や多くの金管楽器などに使われています。さて、その他の変更点としては、腰廻りのドローコードの外付けが内側へと変更、衿がシャツ衿から"立ち襟(スタンド・カラー)"になり、また序盤で少し書いた裏地が取付けられ二重の構造となったため若干保温性が向上したという事。 このように様々な状況・天候・環境で要求される兵士の"シーン別ニーズ"に上手く対応し続けてきた事が、軍装備品として永く愛用された理由の1つだと思います。
少し長くなりましたが、歴史あるモノ・長く愛され続けられているモノには、ちゃんとした確かな愛されるべき理由があるって事ですね。
では、次回のアイテムもお楽しみ!!